一度決めたことは変えたくなく、言動や行動をぶれないようにしたがる心理のこと
人は誰しも「ブレない人でありたい」という心理を常に持っているものです。「自分の言動や行動を筋道が通るようにしたい」と思うため、「あの人は言ってることとやっていることがまるで違う」とか、「以前言っていたことと逆のことを言っている」などと思われたら、普通の人は恥ずかしいと感じるでしょう。
この心理のことを社会心理学者のチャルディーニは「一貫性の法則」と呼びました。言うこととやることがブレまくっていたら、その人の信用にかかわるので、そうならないように意識している人は多いはずです。言動に一貫性を持たせること自体は悪いことではありませんが、実はこの一貫性の法則を逆手にとって人を誘導することも可能なのです。つまり、詐欺や悪徳な商法に悪用されることもあるということです。
例えば、あなたがある商品の購入を決めたとします。ところが、いざ買う時になると、店員に「お客様、申し訳ありません。こちらの商品は現在在庫切れになっておりまして、再入荷も未定となっております。ですが、同ブランドのこの商品でしたらすぐにご用意できます。」と言われてしまいました。この場合、買おうとした商品よりも多少高価であっても、多くの人は一度買うと決めたために、高い商品でも買ってしまうことが多いそうです。このような状況で、買うのをやめるという決断をしにくいのも、一貫性の法則による心理が働いているためです。
この心理は、詐欺や悪徳商法などに使われることもあります。最初に異常に安い値段を提示して買う気にさせた後に、「実は、この値段で売るには条件があります。」などと高額なオプションを付け、最終的には不当に高額なものを買わせてしまうという手口です。一度買うことを決めてしまうと、「それは高いな」と思っていても断りにくくなってしまう心理に付け込んでいるのです。
誘導するにはいきなりハードルを上げ過ぎないこと
この法則を活用すれば、「1度決めた態度を崩したくない」という心理に相手を追い込み、こちらの都合のいいように誘導することが可能になります。例えば、「悪いけど、1000円貸してくれない?」と頼まれて、いったん応じたら「あ、ごめん。やっぱり3000円借りてもいい?」と金額を上げられても、たいていの人は「それならダメ」とは言いにくいものです。途中から、話が変わってきたな、と気づいたとしても、「さっき、いいって言ったじゃないか」と言われたら、「やっぱりやめる」と言うにはある程度の勇気が必要です。ただし、この法則を使う時にいきなり頼みごとのハードルを上げ過ぎてしまうと、さすがに相手は断りやすくなってしまうので、そのさじ加減が重要なポイントとなっています。
ここでおさらいです。一貫性の法則とは、「他人から強要・強制されたことに対しては反抗しやすいが、自分で決めたことに対しては、なかなか矛盾した行動がとれない」ことです。この心理を巧みについて「あなたが自分で決めたことですよ」と強調すれば、うまく誘導できるでしょう。
➀人は”自分が決めたこと”に対して矛盾した行動を取りたがらない。
②”自分で決めたんでしょ”と言って、巧みに操ることができる。